絞絞り染め着物はどうやって作られる?種類・特徴・魅力とリメイク実例を解説

色んな絞りの生地 着物

「絞り染め」と聞くと何を思い浮かべますか? 高級な着物、藍色の浴衣とか、風呂敷かもしれません。
実は絞り染めの発祥はインドや中国からと言われているんです。日本にあるのと同じような模様の生地を見たことはありませんか?

この記事では、日本の様々な絞り染めの魅力を感じていただけたらと思います。

絞り染めとは

「絞り染め」とは、布の一部を糸で絞った後に染料に着ける技法です。
布地を糸で縫って括る(くくる)締めるを繰り返し、染める部分と染めない部分を作ります

染料に浸して布を広げると染めなかった部分が白く残り、絞った部分が突起状になり立体的な凹凸模様になります。

職人の手作業で行われるため、着物全体を絞る「総絞り」は膨大な時間がかかります。
板で挟むという方法もあります。

昔は100種類以上の絞り技法がありましたが、今では職人が激減し25種類くらいになりました。

糸入れや絞る加減は職人のそれぞれの手によって異なり、浸け染め時間や素材によって表現が違ってくるので、全く同じものはなく世界で一点ものとなります。

代表的な絞りの種類

絞り染めには多くの技法があり、それぞれに表情や風合いが異なります。主なものは以下の通りです。

  • 鹿の子絞り(かのこしぼり)
     無数の小さな点が連なるような愛らしい柄。絞り染めを代表する伝統的な技法。
  • 辻が花(つじがはな)
     絞りをベースに、墨描きや挿し色を加える華やかな技法。
  • 帽子絞り
     布を突起状に引き出し、糸で括って帽子のようにする手法。
  • 板締め絞り
     布を板で挟み、外側だけを染めることで規則的な幾何学模様を出す技法。
  • 縫い締め絞り
     布を縫い寄せて縮めることで、細やかなライン模様を表現する技法

「鹿の子(かのこ)絞り」

模様が小鹿の斑点のように見えるため、このように呼ばれています。
鹿の子絞りの中でも、「疋田絞り」が特に有名です。

疋田絞りは、布目45度の角度で鹿の子絞りの模様が隙間なく埋まっていて、より細かいものを「本疋田絞り」と言われています。
粒の細かさが疋田絞りの価値を左右するので、本疋田絞りとなるととても高級品となります。
一反で16万粒くらいです。

一反完成させるのに一年から二年かかると言われています。

 

気が遠くなりそうな作業!より大切にしようという気持ちになります。

京鹿の子絞り
鹿の子絞り
京鹿の子絞りの着物

「辻が花(つじがはな)」

室町時代から安土桃山時代に作られた技法です。
しかし、大流行した辻が花染めは、江戸時代前期の友禅の普及とともに衰退し、やがて完全に姿を消していきました。
そして資料が少ないことから「幻の染め物」とも言われています。
流れるような花や草木が描かれているのが特徴で、振袖にも用いられとても華やかです。
「絞り染め」が主となり、そこに描き絵や箔・刺繍などを併用されています。

絞りの注意点

絞り染めには特有の注意点があります。

  • 縮みやすい
     生地に強い圧力や湿気が加わると収縮しやすいため、保管や着用時に注意が必要。
  • シワが取れにくい
     絞りの凹凸が魅力ですが、アイロンは基本NG。専門店でのお手入れがおすすめです。
  • 汚れやすい部分に注意
     特に白場が多い絞りは汚れが目立つため、着用時は衿や袖口に注意。
  • 仕立てが難しい
     生地が伸縮するため、通常の生地より仕立てに技術が必要。

立体的な凸凹模様のため、潰れたり擦れたりしないよう、保存する際は絞りの上に他の衣類を置かないようにしましょう。

絞りの魅力

絞り染めの最大の魅力は、ひとつとして同じ模様がない「一点もの」であることです。
手仕事によって生まれる微妙な色の入り方や凹凸が、唯一無二の美しさと温かさを生み出します。
また、光の当たり方によって表情が変わり、着物として身にまとうと自然な陰影が生まれて立体的に映えます。
さらに、絞りは柔らかさや優しさを感じさせ、日本らしい繊細な美の象徴ともいえます。

絹の絞りの特徴はふんわりとした柔らかさです。
ポツポツした絞りの手触り、さらっとした肌触りは魅力です。

絞りの羽織からリメイクしたプルオーバー
絞りの羽織からリメイクしたプルオーバー

絞りの産地と種類

絞り染めは、上記でご紹介しました京都の「京鹿の子絞り」と、愛知県の「有松・鳴海絞り」が二大産地です。
京鹿の子絞りは絹布に絞りを施すのに対し、有松・鳴海絞りは木綿の布に絞りの技法を施します。

《愛知県名古屋有松》有松鳴海絞り(なるみしぼり)
主な絞り技法…豆絞り(まめしぼり)
手蜘蛛絞り(てくもしぼり)
機械蜘蛛絞り(きかいくもしぼり)
三浦絞り(みうらしぼり)
嵐絞り(あらししぼり)
筋絞り(すじしぼり)
雪花絞(せっかしぼり)
叢雲絞り(むらくもしぼり)
杢目絞り(もくめしぼり)
唐松縫い絞り(からまつぬいしぼり)
折り縫い絞り(おりぬいしぼり)
このほかにも、「鹿の子絞り」「日の出絞り」「みどり絞り」「貝絞り」「巻き上げ絞り」「柳絞り」「帽子絞り」「縫い締め絞り」など

その他に
・秋田県:浅舞絞り(あさまいしぼり)
・岩手県:南部茜(なんぶあかね)、紫根染(しこんぞめ)
・新潟県:白根絞り(しろねしぼり)
・福岡県:博多甘木(あまぎしぼり)
・熊本県:高瀬絞り(たかせしぼり)
・大分県:豊後絞り(ぶんごしぼり)

有松絞りの手蜘蛛絞り
有松絞りの手蜘蛛絞り

用語を入れてインターネットで検索すると、その絞り写真を見ることができます。
持っている絞りがどの技法で作られたものなのかを知るのも楽しいですよ。

近年は、絞り技法を使ったおしゃれな手ぬぐいやストール、小物も見かけるようになりました。

例えば、北欧風の部屋やキッチンにも、さりげなく和テイストを入れてみるのも素敵ですね。

絞りで作られたうちわ

絞りの着物からリメイクできるもの

洋服・ファッションアイテム


● ブラウス・チュニック
絞りの柔らかい風合いを活かし、軽やかなトップスに。

● ワンピース
鹿の子などの細かい模様が、唯一無二のデザインになる人気リメイク。

● スカーフ・ストール
着物の反物幅が細長いので、ストールとの相性抜群。

● ベスト・ジャケット
部分使いでも絞りの存在感が際立つ。

● 巻きスカート
絞りの立体感が動くたびに綺麗に見える。

バッグ・小物類


● トートバッグ・サコッシュ
絞りの模様がアクセントに。裏地を変えて強度も確保できる。

● がま口バッグ・ポーチ
絞りのふっくらした質感と金具の相性が抜群。絞りのふっくら感と丸いフォルムが相性抜群
小ぶりでも存在感があり、着物・洋服どちらにも合います。
→ 鹿の子絞りの生地が特に映えます。

● 財布・カードケース
華やかで軽く、日常使いの小物に最適。

● ヘアアクセサリー
シュシュ・カチューシャ・ヘアピンにすると和モダンな雰囲気に。

● コサージュ・ブローチ
絞りの立体感が花飾りにぴったり。

インテリア雑貨


● クッションカバー
柄の美しさがインテリアのアクセントに。

● タペストリー
絞りの文様をそのままアートとして飾る。お気に入りの部分を縦長フレームに入れる
光の当たり方で陰影が変わり、美術作品のようになります。
→ 余ったハギレでも素敵なインテリアに。

● テーブルランナー・ランチョンマット

日常空間に和の上品さを添えるアイテムに。

● 巾着袋・お茶席小物
茶道具入れとしても絞りは人気。

その他の人気アイデア


● 日傘・布バッグの持ち手巻き
絞りの色柄を生かし、個性的なファッションアイテムに。

● スマホケースの表布
手作りで高級感あるケースが作れる。

● 袱紗(ふくさ)・数寄屋袋
フォーマルシーンにも使える和小物に。

以上、 絞りをリメイクするときの参考になさってください。

もう一度、注意点をまとめました。

伸縮しやすい生地の特性を考える
絞りは凹凸の分だけ布が縮んでおり、裁断時に伸びやすいため要注意。

アイロンは基本NG
凹凸がつぶれると魅力が失われるため、扱いは慎重に。

裏地や補強が必要なことも
バッグなど負荷のかかるものは裏地選びが重要です。