訪問着といえば結婚式やパーティーなどで着用することが多い着物ですよね。
振袖は未婚者が着るものだけど、訪問着は誰が着れるものなの?
色留袖や付下げとよく似ているんだけど…違いは?
訪問着について、ちょっとした知識を知っていると何かの時に役立つと思います。
訪問着の豆知識
まず訪問着は「いつ、だれが着用するのか」、「訪問着と色留めそでの違い」そして「訪問着と付下げの違い」「絵羽(えば)模様」について掘り下げていきますね。
いつ・誰が着ることができるのか
訪問着は既婚・独身に関係なく、さまざまな年齢の女性が対象となる着物です。
そして留袖の次に格式の高い着物になります。(紋の数によって変わります。)
結婚式、入学式・卒業式などフォーマルシーンから、コンサートやお茶会などカジュアルシーンまで幅広く対応しています。

振袖は未婚の女性が着用する着物なので結婚後は着る機会がなくなってしまいます。
それで振袖の袖を短くして訪問着として着るという方法もあります。
訪問着と色留袖の違い
色留袖は上半身は色無地に対し、訪問着には上半身に柄が入っています。
肩の部分から裾にかけて、流れるように柄が入っているため、上半身を見ると色留袖との違いを判断することができます。
訪問着と付下げの違い
訪問着と付下げは、どちらもフォーマル寄りの着物ですが、
「格(フォーマル度)」や「柄の入れ方」に明確な違いがあります。
訪問着
【1】格(フォーマル度)
準礼装(セミフォーマル)
結婚式・披露宴・パーティー・お茶会・入園式など幅広く着られる
未婚・既婚どちらでもOK
【2】柄の入り方の特徴
“絵羽(えば)模様”と呼ばれる、
縫い目をまたいで柄がつながるデザインが最も大きな特徴。
裾→脇→肩→袖にかけて一枚の絵のように流れる。
(例:裾から大きな花がつながって伸びていく…など)
【3】雰囲気
華やか、豪華、視線を集めるコーデがしやすい
訪問着はフォーマルな席で迷ったら“安心の一枚”
付下げ
【1】格(フォーマル度)
訪問着より少し控えめなセミフォーマル
パーティー、式典、観劇、七五三、同窓会などに最適
【2】柄の入り方の特徴
柄が縫い目をまたがず、すべて上向きに配置される
絵羽付けではないため、柄のつながりがない
しかし最近は「付下げ訪問着」という中間タイプも多く、
見た目は訪問着に近いものもあります。
【3】雰囲気
控えめ・上品・落ち着いた印象
訪問着より“場を選ばず使える”万能さがある
訪問着の特徴「絵羽(えば)模様」
訪問着の特徴といえば「絵羽(えば)模様」です。
絵羽とは、着物に仕立てたときに柄が切れずにつながって見えるよう、反物(生地)にあらかじめ柄を配置して染める技法・設計のこと。
訪問着や留袖などの“フォーマル格の高い着物”に用いられる特徴的な柄付けです。
この絵羽模様は、白生地を着物の形に仮仕立てし、この状態の白生地に下絵の模様を描いていきます。
それから元の反物(解いて一枚の状態)に戻し、下絵通りに友禅染や蝋纈染めなど様々な技法で染めていきます。
肩から胸や袖、そして裾にかけて、縫い目を渡って絵がつながり、全体に豪華な柄になります。
広げてみてください。下のように一つの絵画のような、うっとりする美しいものです。

日本の季節を感じる花や生物、古典文様にも意味があります。
お手元の着物には何が描かれていますか?
文様に隠された意味を調べてみると着物の奥深さに魅力を感じると思います。
訪問着には、金の刺繍が施された華やかなものから、控えめで繊細なもの、古典的なものまで、
幅広い色柄があります。
京友禅や紬の訪問着もあります。
絵羽の種類
絵羽にはいくつかのタイプがあり、訪問着の雰囲気を大きく左右します。
■ 1. 総絵羽
着物全体に柄が大きくつながる。
裾から肩に伸びるような豪華絢爛タイプ。
■ 2. 部分絵羽
主に裾・上前・袖に柄を集め、上部は無地や控えめにするタイプ。
上品・現代的・使いやすい。
■ 3. 染め絵羽(手描き・友禅)
着物の形に一度仕立ててから描く技法(仮絵羽)をとる場合も多い。
高級訪問着に使われます。
どちらを選ぶべき?(場面別)
■ 結婚式・披露宴
→ 訪問着が安心
(付下げでも品のあるものなら OK)
■ 七五三・入卒式・親族の行事
→ 付下げの方が出すぎず品よくまとまる
■ パーティーや観劇・お茶会
→ 付下げの落ち着きが使いやすい
■ “とにかく一枚だけ買うなら?”
→ 訪問着(使える幅が最も広い)
柄行き・格調・生地を考慮しTPOに合った和装を楽しんでください。
訪問着からリメイクしたワンピース
訪問着からリメイクするときには、まず絵柄を広げ、実際に自分の体に当てます。
柄を活かすためにどの位置にもっていくか、そして素材の厚みや柔らかさを考慮しデザインを考えていきます。


リメイク時には絵羽の流れを壊さないように
絵羽の美しい部分を前身頃中心・スカート前面に配置すると上質な仕上がりになります。
ご自宅に眠っている訪問着があれば、少し広げてみてください。
そして、どんどん着用して外の空気に触れさせてあげてくださいね。
絵羽の制作工程(専門的)
■ 1. 仮仕立て(仮絵羽)
反物を一度「着物の形」に仮縫いする。
→ この段階で柄の流れ・高さ・境目の位置を確認。
■ 2. 柄付け(下絵づくり)
前身頃・後身頃・袖・衽など、各部の高さを計算しながら
柄の連続性を設計する。
(これが最も高度な工程のひとつ)
■ 3. 染色(友禅・金彩・刺繍など)
柄の流れがズレないよう、仮絵羽のまま作業する場合もある。
■ 4. 解き(ほどき)→水元(みずもと)→仕立て
染め終わったら一度解き、洗い張り(水洗い)してから
正式に仕立て直す。
→ この工程により、絵羽が正しくつながった美しい訪問着になる。
まとめ
訪問着は、フォーマルから少し格式のあるカジュアルシーンまで幅広く使える、とても応用力の高い着物です。
色留袖や付下げとの違いを知ることで、どの場面にどの着物がふさわしいのか、自信を持って判断できるようになります。
特に訪問着の大きな魅力である絵羽模様は、まるで一枚の絵画のように柄が流れ、美しい存在感を放ちます。
ご自宅に訪問着があれば、ぜひ広げて柄の流れや文様の意味に触れてみてください。
その一枚が、フォーマルな場を華やかに彩るだけでなく、ワンピースへのリメイクとして新しい命をまとって生まれ変わることもあります。
TPOに合った着物選びは、和装の魅力をいっそう深く感じられる大切なポイントです。
訪問着の特徴や絵羽の仕組みを知ることで、和装の美しさと奥行きをより楽しめるはずです。
大切に受け継がれてきた一枚を、これからも日々の中で活かしていきましょう。